明石市長「兵庫県の自治体は地元マスコミにカネ(税金)を渡している。あと大阪維新もマスコミとwin-winで付き合ってますしね」

　鮫島　そうは言っても、市長として正しい施策を進めていく中で、信頼が生まれてくる部分もあると思うんですよ。二期目の選挙で、議会や一部の市役所職員が泉派として応援してくれることはなかった？　
　泉　それはない。一期目も二期目も、選挙で私のことを本気で応援してくれた議員さんは、一人だけでした。

　本当に私の支持基盤は市民だけなんです。議会や役所でいくら孤立しても、市民との距離感の近さは半端じゃないですよ。明石市民が街で私を見つけると、必ず「マスコミに負けないで」って声をかけにくる。不思議なもんで、みんなから「負けないで」と言われます(笑)。市民は、私がマスコミにイジメられてるのをわかってくれてるんですよね。初めて会う方にいきなり「私たち、わかってるから」と言われることが多くて、「頑張って」と言われることは意外と少ない。それが、私の市長としての立場を象徴しているかもしれません。

　鮫島　なるほど。それほどの市民からの応援があっても、一度は辞職する原因となった暴言騒動について、ざっと経緯を振り返ります。

　問題が発覚したのが2019年1月。明石駅南東の道路拡幅工事を巡って、立ち退き交渉をしていた市の職員に泉さんが「火をつけて捕まってこい。燃やしてしまえ」などと暴言を浴びせる音声が出回ります。明石駅前交差点を改修し国道2号の約200メートルの区間を拡幅するという事業で、市は2012年ごろから国の委託を受けて土地の買収を始めていました。泉さんは、土地の買収に応じない地権者の建物を「燃やしてしまえ」と部下を叱責したわけです。

　この問題を受けて、泉さんは辞職するのですが、市民からの強い再出馬要請を受け、3月の出直し選挙に出馬し圧勝しました。

　発言自体はひどいし、相手は部下ですからパワハラ以外の何物でもない。でも注意しないといけないのは、この会話自体は2017年6月のものです。泉さんの発言は、役所でずっと隠し録りされていたのでしょうか。

　泉　ええ。私を失脚させるために、一度目の選挙の直後から一部が録り続けていたようです。当時は気付きませんでしたけど、彼らによって裏で私の暴言集まで作られていた。

　あれは役所の中の技術系のトップに対する発言なんですが、別に彼のことを嫌っていたとか、そんな気持ちは微塵もなかった。むしろ一番近しい人でしたし。

　鮫島　録音したのは、その技術系のトップの方？　
　泉　それはわからない。はっきりしたことは。

　鮫島　日常的に録っておいて、それをぶつけるタイミングを窺っていたということ？　
　泉　それ以外でも、録音された会話の音声がちょくちょく流出してるんです。たとえば、私が市長になった1年目に、前年に決まっていた明石駅前ビルの再開発計画を変更して、ビル内に図書館と子ども施設を入れたことがありました。その時に、建設業者に言ったことも録られて流出した。だから、録音は1年目からやられているんです。

　鮫島　普通は、一回痛い目に遭うと気をつけるものですが、泉さんは全然気にしなかった？　
　泉　う～ん、そう言われると……。たとえば、駅前の再開発の件は、俗に言う「利権再開発」なんですよ。完全に出来レースで、入札で勝つ建設業者も決まっていた。

　自分としては、利権にメスを入れるというほどのつもりはなく、駅前を良くしたかったので、建設業者を呼んで「(ビルの)中身を入れ替えてくれ」とお願いしたら断られた。それで「私の方針に従わないなら、計画は全面中止、これまでの努力は全てパーや。その代わり、市民から要望の強い図書館と子どもの施設を入れてくれたら続けさせる」と2択を迫った。そこまで言って、やっと私の方針に従わせることができた。たしかに荒っぽいやり方でしたが、それくらいしないと業者は従いませんから。