韓国の若者たち、「日本が大好き！」

　日韓関係が悪化した要因にはいくつか考えられるが、その一つとして韓国の反日感情がある。ところが、若者の間で少し変わりつつある。

　春の新学期を迎えると「日本語を勉強する理由」というテーマで新入生に韓国語の作文を課題に出す。提出された原稿を読みながら、今年はこれまでと違う点があるのに気が付いた。

　1クラス40名ほどいるなかで数名だが、以前なら、将来は日本に行って韓国の歴史を「日本に広めに行く」と書く学生が必ずいた。「広める」とここでは訳したが、原文は「?? ??」で「教える」とたいていは訳される。つまり日本人を韓国の歴史観で啓蒙するために日本語を勉強するというのだ。それが日韓関係改善の近道だという。

　そんな言葉を目にするたびに、これで勉強が楽しいのだろうかと何度も思ってきた。そんな途方もない作業など、やろうと思っただけで嫌になる。そもそも歴史観なんて自由なのだ。韓国の歴史観を日本で話して何とかなるのであれば、日韓関係は韓国にとってとっくに改善されているはずだ。

　ところが今年はそう書いてきた学生が一人もいなかった。そこに私は驚いた。またあの言葉を目にするのかと身構えていたが、見事に肩透かしを食らったのだ。

　なかには「私は日本が大好きです」と書いてきた学生もいた。「大好きです」を意味する「?????」は「愛しています」とも訳される強い親愛を表す言葉だ。こんな言葉で日本好きが表されたのも初めてだ。しかもこの学生は戦前における日本の朝鮮半島統治について「罪を憎んで人を憎まず」とまで言い切っている。

　福沢諭吉について質問する学生もいた。本人が言うには、小学生のころから「悪者」として教えられてきたけれども、嵐の櫻井翔が尊敬する人物として「福沢諭吉」を挙げたことで、もっと知りたいと思ったという。

　櫻井翔の発言は韓国内で批判と的なったが、質問をしてきた学生の真意は、歴史にはいろいろな見方があって、日本ではどう評価されているのか知りたいというのだ。特に、韓国の鎖国と日本の鎖国（正式には海外渡航禁止令）との違いにも関心を持っていて、そこから近代史に関心が向いたという。

　もちろん、こうした見方が若者の間で主流になっているわけではない。だが、日本に対するフラットな視線を持ち始めているということは言えるだろう。

　尹政権はそうした状況を踏まえて、強制徴用問題解決案を打ち出したとも報じられている。若い世代の日本好きが、他の世代の反日感情をそれなりに和らげることになるのだろうか。それは至難の業なのかもしれないが、今後の日本の出方も見守っていきたい。