農業始めようと思う。　楽で儲かる作物教えろ

https://digital.asahi.com/articles/ASP5P660CP5MUPQJ011.html

逃げ出した外国人を雇いたい　実習生を頼る「野菜王国」

スリランカ人女性の死亡をめぐり出入国在留管理庁への批判が強まるなか、政府・与党は出入国管理法（入管法）改正案の今国会の成立を断念しました。在留資格がないままに暮らす外国人をどうしたらいいのか。日本にはすでに、現実問題として向き合っている地域があります。少子高齢化の進む村や迫害を逃れた人が多く住む市を訪ねました。
4000人の村で働く1000人の外国人長野・川上村
日本で働く外国人を在留資格別に見たとき、4分の1近くを占めるのが約40万人の技能実習だ。途上国への技術移転の名目で1993年に始まった制度だが、過酷な労働に耐えかねて逃げ出したり、実習先の都合で契約を打ち切られて行き場を失ったりする若者たちを生んでいる。出入国在留管理庁によると、こうした人たちは昨年だけで、全国で5885人に上ったという。
レタス生産量日本一で知られる長野県川上村の由井明彦（はるひこ）村長は3月、入管庁長官に、こうした「一時失踪実習生」に在留許可を与えて農作業への就労を許可することなどを求める要望書を出した。野菜王国といわれる村で、なにが起きているのか。5月上旬、村を訪ねた。
一面に広がる畑には雑草を防ぐ白いシートが敷かれ、小さなレタスの苗の植えつけが始まっていた。役場へ向かう途中、自転車に乗った、東南アジア出身らしい若者たちとすれ違った。会釈をすると、笑顔が返ってきた。人口4千人の村には、農繁期の春から秋にかけ、毎年約1千人の外国人が働きに来ている。
植え付けや収穫は繊細で、機械化できない作業が多い。収穫期には午前5時、6時に野菜を詰め込んだトラックが大都市圏に向けて出発するため、その前に収穫や荷造りを終えなければならない。「朝採れの新鮮でみずみずしい野菜が店頭に並ぶ、消費者の『当たり前』を守るためには、労働力が不可欠なんです」。村総務課長の原恭司さんは話す。
昨年は新型コロナの感染拡大に伴って、受け入れ予定だった実習生のうち約300人が来日できなかったという。派遣会社などを通じて日本人アルバイトを集めたが、「深夜早朝からのタフな仕事。日本人アルバイトは居着かず、入れ代わり立ち代わりだった」と原さん。今年もコロナ禍が続き、実習生の来日が見通せない中で、「現実を見てほしい」と国に訴えたのが今回の要望だった。想定するのは、技能実習生として来日したものの逃げ出した人や、実習先の都合で契約が打ち切られて在留資格を失った人。「よくよく聞くと、実習生本人に過失がないような例も多い。働きたい外国人と、働いてもらいたい農家をうまくマッチングできれば、誰にも迷惑はかからないのではないでしょうか」
だが、入管庁は、在留資格を失った場合は速やかに帰国させるのが原則という立場。村の要望には「『特定技能』など、すでにある在留資格の中で運用してほしい」という立場を崩さなかった。特定技能制度は、2019年に新設。昨年4月に受験資格が拡大され、難民申請中の人や実習先を失った技能実習生も日本での試験を受験できるようになったが、既に在留資格がない人は対象外だ。入管法改正案のたたき台を検討した法相の私的懇談会「収容・送還に関する専門部会」でも、仮放免者など在留資格のない人にも特定技能の受験資格を広げる意見が出たが、本格的な検討には至っていない。
村にとっては、働き手が必要なのは農繁期だけなのに、特定技能だと通年での雇用になることも制度が使いにくい理由に挙げている。特定技能の在留資格を得るには試験に合格する必要があり、「その分求められる給与水準は上がるが、野菜の値段が高くなるわけじゃない」という農家の声も聞こえてくる。
ただ、村長らに話を聞くと、村側にも長期的には技能実習から特定技能へと移行していくという認識はあるという。特定技能のうち、季節によって仕事量が変わる農業と漁業分野では派遣が認められており、村の農閑期にあたる秋から冬にかけて、九州など温暖な地域で働いてもらうことで雇用を守る「産地間リレー」の試みも始まっている。
一方、在留資格のない人を就労させるやり方が、過酷な労働や待遇につながらないかは大きな課題だ。川上村でも14年、実習生を劣悪な環境で働かせたとして日本弁護士連合会から改善を勧告された経緯がある。