肥料、値上がり 農作物すべての値上げに繋がる可能性

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農業肥料3年ぶり高値　中国が輸出規制、食料価格に上昇圧力

もともと肥料は生産地がかなり偏っている。米地質調査所（USGS）によると、たとえば肥料の原料となるリン鉱石の生産量は中国が世界全体の46%を握る。モロッコ、米国、ロシアを含めた4カ国だけで世界生産量の70%を超える。

カリウムはカナダが生産量で世界首位だ。だが、2位のロシアと3位のベラルーシを合わせると全体の3分の1に上り、カナダの生産量を超える。4位の中国を加えると半分近くを占める。地政学的リスクが国際価格に反映されやすい。

中国は10月半ば、窒素系肥料の尿素やDAPの輸出を停止した。24年に窒素肥料の輸出量を前年比で90%以上減らしたあと、今春以降は輸出の拡大に動いていたようだが、再び輸出規制に転じた。世界向けの供給量で大半を握るレアアース（希土類）を武器化し、輸出規制に乗り出す動きと同様に自国の都合で国際市場を揺さぶっている。

三井物産戦略研究所の野崎由紀子産業調査室長は「農業生産を拡大するため、肥料の国内供給を優先しているのではないか」と分析する。トランプ米大統領の関税政策や米中対立をふまえた対応とみられる。

中国は世界最大の大豆輸入国だが、9月に米国からの輸入はゼロとなったもようだ。米中首脳会談で米国産の輸入再開で合意はしたが、大豆以外の農産品を含めて国内生産をてこ入れするために肥料を振り向ける可能性がある。

世銀は「中国が電気自動車（EV）に使うリン酸鉄リチウムイオン（LFP）電池の原料を確保するため、リン酸塩の輸出を抑制している」とも指摘する。

欧州の農家は他国からの調達に動かざるを得ない。世銀のバフェス氏は「とくにカリウムはロシアとベラルーシ以外の生産国が非常に限られている。調達先の切り替えは容易でなく、コストの大幅な増加につながる可能性がある」とみている。貿易取引の急激なシフトは需給バランスを崩し、国際価格の上昇を招きかねない。

肥料の高騰や供給制約は生産コストの増大を通じて食料価格を押し上げる。

米農務省（USDA）によると、米国で農業生産のコストに占める肥料費の割合は大豆で18%、小麦やトウモロコシでは35%前後に上る。途上国では生産コストのうち肥料の割合が高く、肥料高騰の影響はより大きくなることが見込まれる。

ウクライナ侵略直後の高騰時には、南アジアやアフリカで肥料の投入量を抑える動きがみられた。農業の生産方法を変えずに肥料の投入量を減らせば農産品の収量は減る。国際肥料協会（IFA）は窒素肥料の投入量を5%減らすと、小麦の生産量は3.1%、コメは1.5%それぞれ減ると試算する。

世銀の分析によれば、小麦やトウモロコシなどの場合、肥料価格やエネルギー価格、金利変動は12～16カ月遅れで国際価格に反映される。地政学的な緊張がもたらした肥料の高騰はやがて食料価格を押し上げ、その影響は多くの食料を海外から輸入する日本にも及ぶこととなる。

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