ピエ口恐怖症の若者が増加……ピエ口狩りも発生。世界ピエ口協会が激怒

不気味なピエ口の都市伝説が全米を席巻中だ。今年の8月以降、少なくとも20以上の州で「恐怖のピエ口」の未確認目撃情報が飛び交う。そんななか、プロの道化師たちは人気の下落と身の安全を不安視している。

ピエ口が絶滅危惧種になって久しい。
2014年、米国最大の関連団体、世界ピエ口協会（WCA）は会員数が10年前の約3500人から2500人に激減し、年長の道化師らが次々に死んでいく一方、若いパフォーマーたちは跡を継ぎたがらないと発表した。
それから2年、ピエ口は再び注目を集めている。どうやら、世間の多くは哀れな道化師一族を根こそぎ狩り、絶滅に追い込もうとしているらしい。
この夏、20以上の州で「恐ろしい」ピエ口を見たとの未確認情報が飛び交い、全米中をパニックに陥れている。
コネティカット州のある学区はピエ口の衣装の着用を禁止。10月頭には、白塗りの不審者を構内で目撃したとの噂を受け、ペンシルベニア州立大の学生約500人が「ピエ口狩り」に参加した。

2013年には、イギリス中東部の街、ノーサンプトンに出没したピエ口の写真がツイッターとフェイスブック上に出回り、街の人々を不安に陥れた。
ピエ口の正体は殺人鬼ではなく、22歳の学生であることが判明したが、これにほっと胸をなで下ろしたと言えない者もいる。
その一人が、世界ピエ口協会代表、ランディ・クリステンセンだ。先日、彼は悪意の偽ピエ口を断罪する動画をアップした。
「医者のコスプレをしている人は医者じゃない。誰がこんなバカなことをしているのかは知らないが、とにかくそいつらはピエ口じゃない。無害で健全なアートのかたちを歪め、子供に近づくために悪用しているだけだ」

メリーランド州のお化け屋敷、スクリームランド・ファームスで怖いピエ口に扮するジョーダン・ジョーンズ（22歳）は、蔓延する反ピエ口感情を懸念し、この問題を真剣に考えてもらおうと、フェイスブック上で「Clown Lives Matter」運動を起こした。
「ものすごく怖いよ。みんながピエ口狩りをしている。事態はかなり深刻だ。僕を外で見かけた時、みんながどういう反応をするのかと思うと、ぞっとする」

ラドフォードも意見を同じくする。「先週、誰かがピエ口を銃で撃った。グリーンヴィルでは、ピエ口がいるという噂の森に向かって住人たちが発砲をくり返した。私に言わせれば、ピエ口に扮して悪事を働く者よりも、ピエ口騒動や噂に過剰反応する人のほうがはるかに恐ろしい」

ピエ口の悪者化に大いに寄与してきた一人、スティーブン・キングまでもが擁護に乗り出し、そろそろ「騒ぎを終わりにしよう」とツイッターに書き、「ちびっこを元気づけたり、人々を笑わせたり、ピエ口はたいていいいヤツだ」と加えた。
バンガー・デイリー・ニュース紙のインタビューでは、こう語っている。「ピエ口騒動はいずれ過ぎ去るだろうが（中略）また戻ってくる。条件さえ揃えば、ピエ口は真に恐ろしい存在になりうるからだ」