タリバンは宗教集団ではなく麻薬カルテル、世界のヘロインの90％がアフガン産。日本でも流通か

「勝ったのはイスラム原理主義ではない。20年に及ぶこの戦争で勝ったのはヘロインである」

組織犯罪に詳しいイタリア人作家ロベルト・サヴィアーノが、タリバンのカブール制圧に関して、伊「コリエーレ・デラ・セラ」紙のコラムで独自の分析を披露している。

サヴィアーノに言わせれば、タリバンをイスラム原理主義の民兵組織だと考えるのは「間違い」だという。「タリバンは麻薬密売組織」というのが彼の持論なのである。その論拠となるのは国連薬物犯罪事務所（UNODC）の報告書だ。サヴィアーノはこう書く。

「少なくとも20年前から、この報告書のデータに変化はない。世界のヘロインの90％がアフガニスタンで生産されているのだ。これはタリバンが南米の犯罪組織とともに、世界最強の麻薬密売集団になっていることを意味している」

しかも、いまやタリバンが扱うのはヘロインだけではない。この10年ほどで「ハシシやマリファナの分野でもタリバンが非常に重要な役割を果たすようになってきている」というのだ。

アフガニスタン情勢に関する報道は、「どれもこれも紛争の根本にある構図に踏み込むのを避け、何が戦争の資金源なのかに触れていない。アヘンという問題の核心が脇に追いやられてしまっている」と不満を示す。

アフガニスタンの戦争は「アヘン戦争」だと喝破するサヴィアーノは、コラムでこう切り込む。

「イスラム神学校やブルカ着用強制、少女の強制結婚などよりも先に言うべきことがある。それはタリバンが麻薬密売組織だということだ。厳格な道徳を掲げるタリバンは2001年に薬物の使用や芥子の栽培を禁止しているが、あれは見せかけにすぎない」

世界中の犯罪組織がタリバンの取引先

サヴィアーノが「アフガニスタンにおいての米国の最大の過ちの一つ」と指摘することがある。それは2002年、地上部隊のアフガン侵攻を指揮した米軍のトミー・フランクス陸軍大将が「薬物の取り締まりはしない。それは私たちのミッションではない」と述べたことだ。

サヴィアーノによると、これはアフガニスタンの「アヘン王たち」に向けてのメッセージであり、地元のアヘン王たちがタリバン側につくのを防ぐ狙いがあったという。

だが、米軍がアフガニスタンに駐留した結果、タリバンは自らアヘンの生産と取引を手がけるようになったのである。それはとりわけアフガニスタン南西部ヘルマンド州の渓谷で顕著だった。麻薬の取引に関わるタリバンの幹部は組織内部での地位がどんどん高くなっていったという。

いまやタリバンの顧客名簿にはありとあらゆる組織の名が並ぶ。

「タリバンからヘロインを供給されているのはカモッラ、ンドランゲタ、コーザ・ノストラ（それぞれナポリ、カラブリア州、シチリア島を拠点とするイタリアの犯罪集団）。ロシアの麻薬カルテルも、米国のコーザ・ノストラといったアメリカの犯罪集団も供給を受けている。

タリバンは、アフガニスタン・パキスタン・モンバサ（ケニア）というルートを使って南アフリカのヨハネスブルクの麻薬カルテルにも供給している。南アフリカにも巨大市場があるのだ。タリバンはハマスにもヘロインを供給している。ハマスも、タリバン同様、ハシシとヘロインを資金源とする組織となっている」

サヴィアーノによれば、タリバンのヘロインはインドやパキスタンにも出回っており、最近は中国、日本、フィリピンといった新市場の開発にも力を注ぎ始めているという。もっともタリバンの取引先は麻薬カルテルに限られるわけではない。

サヴィアーノは前述のコラムでこう書く。

「鎮痛薬はアヘンなしには作れない。アヘンがなければモルヒネもコデインもないからだ。通常、製薬会社は認可を受けた生産者のアヘンを買い取っているが、最近はインドの会社からアヘンを購入するようになっている。

だが、そうしたインドの会社のなかには、アヘンをアフガニスタンから直接、入手しているところもあるのだ。私たちが使う麻酔薬や向精神薬にもタリバンが関わっている所以である」

https://courrier.jp/news/archives/258231/